系統樹思考の世界

4月26日(月)

週末の流通科学大での研究会は,なかなか有意義であった。今後も期待できそう。ただ,疲れた。思ったより疲れた。疲れるかどうかは,懇親会での飲み方にもよるのであるが。今後はビールを減らそう。どうもビールが元凶のような気がする。

三中信宏著「系統樹思考の世界 -すべてはツリーとともに」を読んでいる。これもまたすごい本,というか,この人すごい人だなぁ・・・。世の中には,頭のいい人がいっぱいますね。

特に「アブダクション」の説明は,とてもよく理解できたので,以下にまとめておこう。

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「データが理論に対して『経験的支持』を与えるとき,同じ現象を説明する複数の対立理論の間で『支持』の大きさに則ったランクづけをすることができます。あるテータのもとで,もっとも大きな『支持』を受けた最良の仮説を選ぶ,という基準を置くことにより,仮説選択の方針を立てることが可能となります。・・・チャールズ・S・パースは与えられた証拠のもとで『最良の説明を発見する』推論方法を,『アブダクション(abduction)』ということばによって表そうとしました。」

「最良の説明が必ずしも真実であるとはかぎりません。私たちがデータから推論しようとしている物語は,『真』なるものあるいは『偽』なるものではないのです。・・・手元にあるデータからどこまで妥当な結論(すなわち物語)を引き出せるのか,あるいは引き出せないのかを見極めることができれば,それで十分でしょう。」

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どうも思考が,ネガティブになりがちなようだ。しょぼくれているような,いじけているような,単に言い訳しているような・・・。もう少し気分爽快でも良さそうなものだけどねぇ。早くゴールデンウィークにならないかなぁ。


困ります,ファインマンさん

4月19日(月)

体調はそこそこよいが,気分はなんだかどんよりとしている。ストレスがたまらないように,仕事をセーブする,というのは,それほど簡単ではない,というこことをあらためて実感している。科研報告書の作成は,進まず。天候も,なんだかさえない。

ファインマン,レイトン著「困ります,ファインマンさん」読了。「ご冗談でしょう,ファインマンさん」の続編で,やっぱり秀逸の出来である。ファインマン氏を題材にすれば,いくらでも名著がかけるのではないか,と思わせるほど。

やはり,本書のクライマックスは,氏がチャレンジャー号爆発事件の真相究明に挑む過程を追った「ファインマン氏,ワシントンに行く」の章。この事故が,NASAの組織が生み出した「組織事故」であることとが克明につづられている。そして,物理学者である氏が,「組織」という社会科学のフィールドで見せる徹底的な調査は,読者としては痛快であるが,社会科学者としてはやや複雑である。こんな調査は,ひっくり返っても私にはできない。ノーベル賞受賞者で「世界最高の頭脳」と呼ばれる氏と比較するのに無理があるのはもちろんだが,能力の違いというのは残酷である。

それから最初の奥さん,アーリーンとの逸話をつづった冒頭の章は印象深いし,立花隆氏の解説も,やや素っ気ないが本書の価値を高めていると思う。

印象深かったので,以下の文章をメモしておく。

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「オークリッジの町を歩いていて,あるデパートの前にさしかかり,ショーウィンドウにきれいなドレスがかかっているのを見たとき,僕は『ああ,アーリーンの好きそうな服だな』と思った。その瞬間だった。どっと悲しみが堰を切って溢れたのは。」

「偉大な進歩はおのれの無知を認めることから生まれ,思索の自由なくしては手に入れられないことを知らなければなりません。その上で,この自由の価値を鼓吹し,懐疑や迷いは危惧するどころかむしろ歓迎され,多いに論じられるべきであることを教え,その自由を義務として次の世代にも求めてゆく,これこそ,科学者たる私たちの責任であると私は考えます。」

「いよいよ先生の命も数日と知っておろおろしている親友どもを,ベッドからニコニコ眺め,『そんなに心配するなよ。それよりみんな多いに人生を楽しんでくれよ』と言われたのが,最後の言葉になった。」

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岩波には関連書がまだいっぱいあるので,当分は楽しめそうでうれしい。


嵐が丘

4月12日(月)

今日は一日雨の様子。週末しっかり休んだはずだけど,休み過ぎなのか,仕事のペースは上がらず。論文の校正はやっと終了で,一安心。次は科研の報告書だ。

ブロンテ「嵐が丘」を読了。ヒースクリフの人間離れした悪行,復讐劇に唖然とするばかりである。悪人の背後にある強烈な情念(愛?)を描ききっているところに,この物語が一世紀以上も生き残ってきた理由があると思う。悪人,かくあるべし。

裏表紙の本の紹介に「一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説」とあるのだが,この紹介はあまりにひどすぎる。気の弱い女性が読んだら,卒倒するかもしれない。寝る前に読むと,寝付きが悪くなるほど。ただ,心が揺さぶられることだけは確かである。

マーケティング競争の構造

4月5日(月)

いよいよ本格的に新年度が動き出した。例年よりも,仕事が整理されていて,落ち着いた気持ちの新年度ではある。ただ,今日のゼミ選考は波乱含み・・・。一応,楽観的な想像もしてみるが,不安の方が大きい。自分の立ち位置も少し考え直さないといけないのかな・・・。

仕事の関係で,石原武政著「マーケティング競争の構造」を再読。最初に読んだのは,10年以上も前のこと。そのときも,その論理としての完成度の高さに驚嘆したものであるが,今の読み直してみても,その印象は変わらない。もちろん現在のマーケティング研究とは,かなり研究スタイルが異なるし,その内容も現代にはそぐわない点はあるが,それでも,言葉による論理展開の爽快さは,他に類を見ない。マーケティングにおける競争を,こんな形で論理展開できる人はもう現れないだろう。こうした研究が存在したこと自体が奇跡と思える一冊である。