わたしが孤児だったころ


6月2日(土)

こちらに来て、すごく時間に余裕があるのだけれど、思いのほかプライベートの読書がはかどらない。現在は、家族と同じ寝室で寝ており、最初は子供たちが寝た後に読書をする読書灯がなかった。そのまま子供たちと一緒に9時ごろ寝てしまうという状況。読書灯がないからね、などと言い訳しながら、超早寝の生活。その後、読書灯を購入して、子供たちが寝るまで待っていようとするのだけど、それでも、私の方が先に寝てしまうという・・・。最近でも普通に10時間ぐらい寝てることが結構ある。なんだか体の調子がおかしくなるぐらい。もともと寝るのは好きななんだけど、それでも寝過ぎだ・・・。

そんな睡眠生活の合間を縫って、ようやく1冊読了。カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ」。私にとっては3冊目のカズオ・イシグロ。時代は戦前。上海生まれのイギリス人、クリストファーは、上海での幼少時代に両親が失踪し、孤児となる。その後、イギリスに戻り、有名な探偵となったクリストファーは、自分の名声が高まるとともに、満を持して戦時中の上海に両親の捜索に向かう。

イシグロの小説としては、割とテンポ良く、読みやすい滑り出し。イギリスでの生活と上海での幼少生活の記憶が、後におこなわれる上海での両親探しの伏線となっていく。戦争の中、クリストファーが両親を捜索し、最後に失踪の真相が明らかになるくだりは、冒険譚という感じで、勢いがある。でも、20年も前に失踪した両親が、今も当時と同じ部屋に幽閉されていると信じて、頑なにその部屋を探そうとするクリストファーをどう理解すればいいのか、が気になって仕方がない。何か小説上の効果を狙っているということなのだろうと思うけど、どうなんだろう??また、昔の親友アキラに出会う場面も、わざと不自然さを演出しているのだろうか、というほどの偶然すぎる展開。違和感のある設定が読者に及ぼす効果を考えながら書いている、ということなのだろうか?? 面白く読めるんだけど、何となく不思議な印象が残る小説ではある。

この週末、イギリスはエリザベス女王の在位60周年を祝うDiamond Jubilee Weekendである。ロンドンはさぞかしにぎわっているのだろうけど、テレビもない我が家は完全に取り残され、単なる週末になっている。明日は買い物にでも行くか。