体調はそこそこよいが,気分はなんだかどんよりとしている。ストレスがたまらないように,仕事をセーブする,というのは,それほど簡単ではない,というこことをあらためて実感している。科研報告書の作成は,進まず。天候も,なんだかさえない。
ファインマン,レイトン著「困ります,ファインマンさん」読了。「ご冗談でしょう,ファインマンさん」の続編で,やっぱり秀逸の出来である。ファインマン氏を題材にすれば,いくらでも名著がかけるのではないか,と思わせるほど。
やはり,本書のクライマックスは,氏がチャレンジャー号爆発事件の真相究明に挑む過程を追った「ファインマン氏,ワシントンに行く」の章。この事故が,NASAの組織が生み出した「組織事故」であることとが克明につづられている。そして,物理学者である氏が,「組織」という社会科学のフィールドで見せる徹底的な調査は,読者としては痛快であるが,社会科学者としてはやや複雑である。こんな調査は,ひっくり返っても私にはできない。ノーベル賞受賞者で「世界最高の頭脳」と呼ばれる氏と比較するのに無理があるのはもちろんだが,能力の違いというのは残酷である。
それから最初の奥さん,アーリーンとの逸話をつづった冒頭の章は印象深いし,立花隆氏の解説も,やや素っ気ないが本書の価値を高めていると思う。
印象深かったので,以下の文章をメモしておく。
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「オークリッジの町を歩いていて,あるデパートの前にさしかかり,ショーウィンドウにきれいなドレスがかかっているのを見たとき,僕は『ああ,アーリーンの好きそうな服だな』と思った。その瞬間だった。どっと悲しみが堰を切って溢れたのは。」
「偉大な進歩はおのれの無知を認めることから生まれ,思索の自由なくしては手に入れられないことを知らなければなりません。その上で,この自由の価値を鼓吹し,懐疑や迷いは危惧するどころかむしろ歓迎され,多いに論じられるべきであることを教え,その自由を義務として次の世代にも求めてゆく,これこそ,科学者たる私たちの責任であると私は考えます。」
「いよいよ先生の命も数日と知っておろおろしている親友どもを,ベッドからニコニコ眺め,『そんなに心配するなよ。それよりみんな多いに人生を楽しんでくれよ』と言われたのが,最後の言葉になった。」
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岩波には関連書がまだいっぱいあるので,当分は楽しめそうでうれしい。
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