マーケティングの教科書が出版ラッシュである。皮切りは,高嶋克義・桑原秀史「現代マーケティング論」だったのだろうか。簡単なマーケティングの教科書に対するアンチテーゼであった本書は,もしかしたら,マーケティングの研究者,特に一線の研究者を刺激したのかもしれない(あるいは,偶然かもしれないし,私が最近テキストに興味をもっているからそう見えるのかもしれない)。昨日も池尾恭一他「マーケティング」を献本いただいた。小川孔輔「マーケティング・マネジメント入門」も去年発売されているようだ(まだ未入手だが)。
そんな中の一冊が,石井淳蔵「マーケティングを学ぶ」である。これは,従来型のマーケティングの教科書とずいぶん切り口が違う。もともと,日本のマーケティングの教科書は,トータルで見ると書いてある内容には大きな違いはないのだけれど,細部の用語の使い方や強調点は,教科書によってかなり違う。今回の「マーケティングを学ぶ」は,コンパクトな分,その違いがかなり目につくし,その違いは斬新だと思う。マーケティングという概念で経営現象を切る時の「切り口」が,よりシャープになっている印象がある。
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・大きな構成:①市場志向の戦略づくり,②戦略志向の組織づくり,③顧客との接点のマネジメント,④組織の情報リテラシーを確立する
・市場志向,という概念が全面に出ている
・組織はブランド,という観点から語られている印象
・顧客の接点として,ブランド,営業,チャネルがひとくくりに語られる
・情報リテラシーの概念が中心になり,マーケティング・リサーチという技術論が後退している
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ざっと整理してみると,より実務の現場で重要なマーケティング問題を中心に,議論の再構成がおこなわれた印象である。4Pの切り口は,今日的なマーケティング活動の要請,あるいは重要性とマッチしていないから,(石井先生の見解が正しいかどうかは別として)こういった取り組みがこれからも必要になってくるのだろう。新書とはいえ,もっと勉強したい一冊である。
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