社会科学のリサーチ・デザイン

9月6日(木)

昨日から子供たちの小学校が新学期となった。朝ご飯が終わると,子供たちが「何しようか~」とごそごそ動き出すくつろいだ感じもいいけれど,少しバタバタしながらも,規則的に物事が流れていく日常も,それはそれで気持ちのよいものである。私の生活も,少し研究よりにシフトできそうな感じがする。

ここ数日は,研究室でキング他「社会科学のリサーチ・デザイン」を読み続けている(K先生,遠くまで本をもってきてくれて,ありがとうございました)。政治学の方法論の教科書だけど,目を見開かされるような指摘が多く,この種の本としては珍しくページをめくるスピードが速い。こんな重要な翻訳書をいままで読んでいなかったのは,私の怠慢で恥ずべきところだけれども,これを反映したような日本語の論文も,目にしないような気がする。皆,どのようにとりいれればいいのか,逡巡しているのか。あるいは,すでに考えを取り入れた論文も存在するのか・・・?

この半年で学んだケース・スタディに関する知見を,個人的なメモとしてワーキングペーパーにまとめようと思っていたのだけど,この本の出現でもう少し時間がかかりそうだ。でも,因果的推論や研究そのものに関する理解は,確実に深まった気がする。

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せっかくなので,ここまで読んだ3章まで(全体の約半分)の内容で,インパクトのあった点を整理してみようと思う。大きく2つの点。第1は,この本がこれまでに読んできた方法論の観点を俯瞰し,体系的に整理してくれているということ。特に,因果関係の基本的な定義と比較研究の関係を論じる流れは,個人的にかなり有益であった。要するに,比較研究とは,因果的効果を推定する際に発生する根本的な問題を回避する方法としてあり,ほぼ同じと見なすことができる(単位同一性を満たした)対象における原因変数の違いから,因果効果を推測する方法,ということになるだろうか(自分だけに分かる書き方となっています。すいません)。

第2に,このような体系的な整理が,最終的に統計的な考え方を使って整理されており,そのこと自体が,定量的な研究と定性的な研究が,本質的には異なるものではないということを物語っていること。もちろん,この種の考え方に対して異論は存在するのだろうけど(全く異なる特徴をもっていて,しかも偉大な貢献をした事例研究も多く存在する),それでも,ここに提示された方法が1つの考え方として強い説得力を持っているのは間違いないと思う。

しかし,政治学と経営学,学問が異なるだけで,ずいぶん議論のレベルが違うな,という感がある。いずれにしても,この半年が無駄にならないように,私個人の研究に活かさなければ。

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