マイケル・K

4月2日(月)

NewPort Pagnellのホテル。時間は朝の5時。まだ時差ぼけが完全にとれないのか、昨日は10時ごろと、ほぼ普通の時間に寝たのに、4時過ぎに目が覚めた。まあ、慣れない環境にいるから、ちょっと神経質になっていはいるんだろうけど。

というわけで、イギリスは5日目。最初の2日間は、すごく天気がよくて、春のイギリスを満喫!って感じだったんだけど、その後は曇天&花冷え(とイギリスでは言わないと思うけど)。なにしろ暇な時間が多くて、散歩ばかりしているんだけど、寒い寒い。それに乾燥しているから、肌の調子もいまいちな感じ。健康には気をつけないとな。

ここまでの4日間で、なんとか家にメドはつけることができた・・・と思う。到着2日目、さっそく以前からコンタクトを取っていた不動産屋を訪れてみるも、「家具付きの家はないね。出てくれば連絡するから。」と一蹴される。その後も、3軒不動産屋を回ったけど、どこも同じ。ものの5分で終了。慌てて大学に相談したりしたけど、特になんということもなく。この日の夜は正直眠れなかったです。

ただ、こちらの知人、淳子さんが電話をかけてきてくれて、相談に乗ってくれたり、現在スコットランドにいる大学院の後輩・石さんも電話をくれたり。気を遣ってくれる人がいて、本当に、本当にありがたい。人生にコミュニケーションは必要なんだ。リアルに実感できる時。

その後、家具付きの家をあきらめて、ネットで住む範囲を限定して探すことに。物件情報は完全にネット掲載に移行していて、ネットがなければ、家探しは無理な感じ。そこで2つ物件を見つけて、昨日、見学に行ってみた。最初に見た物件は、環境がすばらしいが、狭くて・・・高い。2軒目はお話にならなかったので、1軒目にしようと思う、と不動産屋に伝える。仕方ないなぁ・・予算をオーバーするけど、子供のためだと思って、1年の贅沢。しかし、円高でよかった。不動産屋の兄ちゃん(スティーブ、だったかな?)がとてもよい人で、いろいろ丁寧に教えてくれる。家族でくる、といったら、brave manと言われたたりして。はは。

物件への入居は、7日まで待たないといけない。それまで、孤独なホテル暮らしが続く。無理せず、でも怠けずいこう。

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J.M.クッツェー「マイケル・K」
クッツェーの小説は「恥辱」に続き、2作目。世界デビューした作品とのこと。口唇裂(こうしんれつ)で、唇と鼻の一部が裂けている主人公のマイケル・Kが、戦争さなかの南アフリカ・ケープタウンを体の不自由な母と抜け出そうとするところから、物語が始まる。途中、母を亡くし、いくつかの収容所に押し込まれるが、そこを抜けだし、あらゆる束縛を拒否しつづけるマイケル・Kの人生が淡々とした記述で描かれる。途中、母が幼少時代を過ごした(であろう)土地では、人の目をさけるために、夜中の作業だけでカボチャを作り上げる。寝床は手作りの洞窟。パチンコで取った鳥や虫を少しだけ食べて、なんとか生をつなぎ止める生活。生への執着はないんだけど、あくまで自由に、生きたいように生きようとする姿が、徹底している。豊かな生活を求める「自由」とは異なる「自由」のあり方が、強い印象を与えている。

本とは関係ないけど、最初に思ったのは、「なぜこの本をこの時期読む本として選んでしまったのか」ということ。渡英直後の不安な時期に、マイケル・Kの孤独な、明らかに、路頭に迷っている生活(本人が求めているものだが)を読んでいると、不安な気持ちが明らかに増幅する。しかし、時間はあるし、読む本は、とりあえずこれしかないので、読み続ける。なんで自分で自分を不安定にしているんだ、と^^

もちろん、確実に心に迫る小説だし、さすがクッツェーと思わせる。物語に起伏があるわけではないに、読ませる力は衰えない。だだ、そこで受ける印象を言葉にするのはとても難しい(巻末の解説も正直、よくわからなかった)。あえて言うとすれば、「ほっておいてくれ。世界の中で俺一人の存在が、なんだというのだ」という自由のあり方とそれを阻止しようとするあらゆる暴力の表現、なのだろうか?

マイケルの存在がすごく気になる若い医師は、食べないマイケルに必死に流動食を勧めるが、マイケルは骨と皮だけになっても、それを拒否し続け、最後に病院を脱走する。結果、マイケルの生き方は、医師の手紙の形の独白を通して、読者に強く印象づけられる。おまえは特別な人間だ、と。

・・・書いていて気づいたけど、マイケルの求める「かまわないでくれ」という姿勢が一貫しているほど、マイケルは特別になり、他でもない誰かになる、というパラドックスがあるんですね。そうか。すごいな。

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こんなに時間があるなら、もっと日本語の本を持ってくるべきだった。あとは当分、iPadに入ってる本を読むしかない。夏目漱石の残りの作品でも読もうか。

暇に任せて長くなってしまいました。UKバージョンは特別編(生活の記録が多くなりそう)だけど、毎回長くなりそうです^^


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