A Pale View of Hills

12月6日(木)

12月に入り冬至も近づいてきて,イギリスは本当に日が短い。日の出が8時ごろで,日の入りは4時前。明るい時間が8時間足らずというのは,やっぱり変な感じがする。朝は何となく目覚めが悪いし,夕方は散歩がしにくいし。仕方ないので,今日はお昼ご飯を食べて,すぐに散歩に出た。それでもすごく寒くて,昨日降った雪は全然溶けずに凍った状態。家から近いパブリック・フットパスにも行ってみたけど,水たまりは凍っていて,氷はかっちかち。乗っても平気だった。



今日は最高気温が3度,最低はマイナス5度。イギリスはそんなに寒くないと聞いていたのに,ちょっと予想外に寒い。この冬は特に寒くなるようで,ちょっと怖いな。

週末はユーロスターでパリに行ってきた。なぜか長女が昔から行きたい,行きたいと言っていたので,ようやく願いを叶えてあげられてよかった。パリは天気がよくて,凱旋門,エッフェル塔,ノートルダム神院と,どれもすばらしい眺めだった。夕食にはベルギー・レストランで,ムール貝を山ほど堪能。ベルギー・ビールもうまかった。やっぱりフランスは食事がおいしい。まあ,イギリスに比べれば,どこもおいしいような気はするんだけど。



Kazuo Ishiguro "A Pale View of Hills"を読了。秋に日本語訳で読んだので,再読になる。考えてみると,英語で最後まで小説を読んだのは,これが初めてかもしれない。先に日本語で読んでいれば,英語でも理解できるし,英語の方が理解しやすい部分もあったかもしれない。前回よりずいぶんおもしろく読むことができた。

この小説,やはり作品としての完成度は高くないのだと思う。ちょっと欲張り過ぎ,というか,いくつかのテーマが絡み合っていて,物語がすっと入ってこない感じがある。でも,その未完成なところ,(村上さん的に言えば)ごつごつした感じが、だんだん魅力的に思えてくる。

一番ぐっとくるのは,主人公Etsukoが人生を振り返って抱く「諦観」のようなものかなと思う。彼女が主体的に生きるために選んだ人生と,その残酷とも言える結末。彼女のやるせない気持ちがじわじわと伝わってくる。女性はどうやって「自分が主体の人生」を生きるのか。自分の生き方と家族との折り合いをどのようにつけるのか。このテーマのもつ深みが,友人Sachikoとの思い出や娘Nikiとの会話を通して,あぶり出されてくるような仕掛け。このテーマが男性である私の心に響くのだから、女性からすればもっと強い印象を受けるだろう。しかも,この話を男性が,しかもデビュー作で書いた,というは驚くべきことだと思う。

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気がつけば,今年も残り少なくなってきた。ということは,イギリス生活も残りが少なくなってきたということだ。ついでに言えば,38歳も残り少なくなってきたし,30代も残り少ない。なんだか区切りばかりを目指して生きているみたいだけど,人生の節目みたいなものは迫っているのかもしれない。

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