Writing for Scholarly Publication

12月30日(日)

年末を迎え,ようやくWriting for Scholarly Publicationをおおよそ読んだ(まだちょっと残っているけど)。よい本であった。メモを掲載しておく。

Huff, A. S. (1999) Writing for Scholarly Publication, Sage Publication

<概論>
  • 学問的に書くことは,対話である。より活動的に関わるために,学問分野の中での社会的な場所を確保すること。「ライティング・コミュニティ」のメンバーが誰なのか,認識すること。
  • 執筆の初期からアドバイスをもらうことは,時間を節約し,書くことを対話的なモードにしてくれる。
  • 論文は,リライトされ,他人に詳しく検討され,またリライトされて,初めてうまく構成される。
  • ①タイトルとアブストラクト,②アウトライン,③イントロダクションと結論,④本文,の順に執筆する。
  • タイトル,アブストラクト,アウトライン,そしてイントロダクションであれば,論文の全体にアドバイスをもらうよりも簡単で,相手の負荷を少なくすることができる。
<心がけ>
  • よりよく考えるために書き,よく考えられると,うまく書ける。
  • 書く前に考え,さらに考えるために書く。
  • 他人からのアドバイスにタフになること。
  • アドバイスを与えるときには,自分の洞察をため込まないこと。
  • 学問的な対話に入れないかもしれない,という不安に打ち勝たなければならない。そのときには,革新や新しい洞察は,しばしば新しい声から生まれたこと,メジャージャーナルは,知られていない著者の論文も掲載してきたことを思い出すこと。

<共同研究でのポイント>
  • ①なるべく早く作業をして返すこと,②自分の手元にある時には,自分のペーパーだと思うこと,③ふるい原稿を復活させない(コピー・ペースとせずに,書き直す)こと。
<コンバーサントとイグザンプラー>
  • 3つから4つのコンバーサント(conversant;自分の研究の貢献の元になる論文や本)を見つけること。
  • あなたが研究者として最も話したい人(コンバーサントの著者)に話しかけるように書くこと。重要なのは,その人たちに,自分の研究が当該分野の理解に重要であることを納得してもらうことである。
  • イグザンプラー((exemplars;模範論文。自分が成し遂げようとする類似の仕事を効率的に成し遂げている論文)は,採用可能な方法の概略を示してくれる。
<執筆のコツ>
  • ①短いセンテンス,②現在形,③能動態,④シンプルな構成,⑤同じ言葉は多くとも2回まで
  • 自分の執筆がもっともはかどる時間,場所,状況を考えること。最もよい執筆環境を確保し,それを高める戦略について考えること。
  • 翌日の執筆のウォームアップのために,執筆の簡単な部分を残しておくこと。毎日書くこと。もし行き詰まっても,機械的な作業(図をつくる,表を直す,参考文献を整備する)ならできる。
  • なるべく早くドラフトを書き上げること(3週間でドラフトを書き上げること。それから1週間で校正すること)。
  • 新しい言葉をつくる,という誘惑を退けること。

<各論>
  • タイトルとアブストラクト;思い通りの読者を惹きつけられるかどうかは,タイトルとアブストラクトに掛かっている。少なくとも3つから4つのタイトルを考えてみること。アブストラクトを書く前に,キーワードを考えること。
  • アウトライン;執筆の前に論文の構造を示すアウトラインを作ること。
  • イントロダクション;イントロダクションを他人に読んでもらうこと。
  • 結論;論文の他のパートをかくまえに,結論を書いてみること。
  • プレゼンテーション;プレゼンテーションは,考えるための1つのやり方であり,考え直す機会であるから,よいプレゼンテーションの準備をするために,分析や執筆をやめること。プレゼンテーションの前には「リハーサル,リハーサル,リハーサル」
  • 本論の執筆;コンバーサントの論文を注意深く読むこと。イグザンプラーを,論文の中心部分を執筆する過程でも、ガイドとして役立てること。


追加 2013年1月3日(木)

Appendix A; Mary Jo Hatchの論文の書き方

アペンディックスには,本書とは異なる方法で論文を書くMary Jo Hatchさんの論文作成法が紹介されていたので,要旨をまとめる。上記の方法がかなりシステマティックで,他人の意見を重視するのに対して、以下の方法はかなり直感的で,自身の興味に素直な書き方であるように思う。


  • 私にとっては、アウトラインはあまり役に立たない。最初に数ページを書き,後で別の数ページを書く。それをもとに編集していく。読み直して,書き,編集する
  • アブストラクトは最後に書く。タイトルもしばしば変更される。
  • 私にとって,書くこととは,アイディアとのインタラクションである。私が探しているのは,わくわくするような,興味を引かれるような何かである。
  • 効率的にしなければ,ということを心配すること自体からは,何も得られない。ただし,1年に1本の出版は,1つの基準である。
  • 寝ている間に,アイディアが洗練されることがある。だから朝の時間は重要だ。それらをつかんで,書き写す。
  • 一番重要な読み手は,自分である。自分は常に読み手になっている。最近は,共著者から多くの対話を得ている。対話は,共著に不可欠である。
  • 学会,研究会は,対話の機会として非常に重要である。友人に会っただけの学会は,全く意味がない。年に5から6の学会に参加する。また,学会の締め切りが,焦点を定めさせ,生産的にしている。学会発表によって,フレーミングを定めることができる。
  • 書く時には,3から4つ,自分のインスピレーションを高めてくれる論文をてもとに置いている。
  • 言葉の単位で文章にこだわりをもっている。それが自分らしい文章を造り上げる。古典の中で好きな文章を徹底的に研究した。
  • プレゼンテーションの際には,多めのスライドをつくっておく。プレゼンの前日の夜に,何を使うか決める。ただし,本番ではそれを破棄し,直感に従ってプレゼンをおこなう。これがライブ感をつくると思う。
  • 書くことができなくなる,ということは自分には大きな問題ではない(あまり起こらない)。その際にできることは,他の文章を書くことに移る。共著者に投げてしまう,ということ。
  • 補完的な関係をもつ共著者がよい。信頼関係を築くことが重要。




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